2012年7月18日水曜日

角川映画『幻魔大戦』を観る イントロダクション

1983年公開の角川映画『幻魔大戦』 石ノ森章太郎・平井和正原作のコミックや平井単独による小説のアニメ映画化。

 『幻魔大戦』は石ノ森章太郎と平井和正によるコミック版や、平井和正自身による膨大な小説、角川によるアニメ映画など数多くのバージョンが存在し、それぞれが独立した世界を構成しています

 83年に上映されたアニメ版の『幻魔大戦』には賛否両論ありますが、壮大な幻魔世界への入り口としては最もふさわしい作品かも知れません。

 物語は大西洋上を飛ぶトランスワールド航空のジェットライナー機内から始まります。


 超能力者の血を受け継ぐヨーロッパ一の小国トランシルヴァニアの第一王女ルナ姫は、機内で水晶玉を用いて予知をしていたところ、自分の乗るジェットが墜落する光景を目にしてしまう。

 直後に得体の知れない物体と激突したジェットライナーは空中で大破炎上。ルナ姫の身体も空中に投げ出されてしまう。

 もはや死あるのみと思われた瞬間、墜落するルナ姫の身体は白色の光に包まれ忽然とかき消えた。

 ルナ姫が気づいたとき、彼女は宇宙にいた。銀河系を380万光年隔てた彼方だ。何者かが彼女に語りかける。「今のあなたはアストラルボディ、意識体としてここにいる。思念を直接コンタクトしている」と。

 テレパシーの送り主は自らを『フロイ』と名乗る。固有の形を持たず特定の場所にいるわけでもない。探しても見えない存在だという。

 フロイに促され意識を開いたルナ姫は、暖かいエネルギーの流入を感じる。その偉大さにルナ姫はフロイを神ではないかと思い始める。だがフロイは自ら「神ではない」と否定する。

 フロイは「大宇宙のエネルギー生命体」だという。ルナ姫はなぜそれほど偉大な存在が自分を呼んだのか不思議に感じる。するとフロイは彼女にビジョンを送った。

 それは数百億年にわたって続く銀河の戦乱、地獄絵図の模様だった…。

 ルナ姫は星々が消えていくのを見た。わずか10億年の間に無数の島宇宙が消えていく。それは全宇宙の破壊者『幻魔』の仕業だった。

 戦乱は無限の過去から続いている。この島宇宙で最も勇敢なサイボーグ戦士・ベガは200年も幻魔と戦い続けたという。

 だが最愛の恋人アリエータが幻魔によって命を絶たれたとき、失意の中でベガは敗残兵となった。2千年前の話だ。そして今や幻魔大王の魔の手は銀河系宇宙へと伸び始めた。

 カプセルの中で眠り続けるベガは、幻魔の策略によって宇宙の果てへ放逐された。いずれ幻魔の存在に気づくであろう一人の少女もろとも抹殺するためだ。

 その少女とは…。他でもないルナ姫のことだった。

 ルナ姫の意識は380万光年の彼方から大西洋上に戻る。ジェット機の残骸上で夜明けを迎えたルナ姫に、フロイは「戦士ルナの誕生」を告げる。

 ルナは問いかける。私は何のために闘うのか? だが闘う以外に生き延びる道はないのだ。フロイは言う。「あなたがたには希望があり、愛と友情の連帯があり、至上至高の価値を求める心がある。それが集結したとき、幻魔を打ち破ることが可能になる」と。

 ルナ姫の前にベガが姿を現した。同胞も友も全てを失ったベガはこのまま眠り続けたいと懇願する。だがルナは許さない。これはフロイの意志だ、アリエータのことを忘れたのか、彼女への愛を実証するのだと迫る。

 フロイの名を聞いたベガは一瞬にして表情を変える。いま目の前にいるのは地球の戦士ルナだと知ったとき、ベガは悟った。自分はこの時、この瞬間を待っていたのだと。

 戦士ベガは覚醒した。今こそルナ姫とベガを中心とする地球戦団と幻魔の闘いが始まったのだ。


 ここまで紹介したのは、平井和正の小説なら第1巻最初の50ページぐらいですね。小説版は全20巻ですから、幻魔大戦がいかに長大な物語か分かろうというものです。

 小説やコミックではジェット機内の様子、宇宙での幻魔との闘いの模様などが細かく描かれており、大西洋上に落下したルナ姫をイルカの群れが救出に来る場面もあったりします。

 そう考えると映画版は時間の制約もあり、かなりはしょった展開になっているのですが、初めてビデオで見たときは、そんなこと知りもせず引き込まれるように観ていたのを思い出します。

 ルナとフロイが宇宙空間で邂逅する場面などは、かなり宗教画チックな演出になっており、これはこれで非常に斬新な映像だったのではないでしょうか。

 フロイ役を演じたのは美輪明宏さんですが、男女の性差を超越したフロイの存在感を見事に表現していると思います。ルナ姫役の小山茉美さんもスピリチュアル方面では知る人ぞ知る存在ですから、これはハマリ役だったかもしれませんね。

 私がこの映画をレンタルビデオで観たのは大学生の頃でしたが、『人間は何のために生きるのか?』といった青臭い疑問に拘泥する哲学青年でしたから、超能力のような道具立て以上にセリフひとつひとつが胸にしみいるような思いでした。

 後に原作のコミックや小説版を読んで、自分が思っていた以上に素晴らしい作品世界が広がっていることに気づき、あらためて「幻魔ワールド」に触れるきっかとなった映画版をDVDで購入した次第です。

 これから物語は東京に舞台を移し、本編の主人公たる東丈の登場と覚醒を迎えるわけですが、映画版で一番面白いのはこの東丈が超能力に目覚めていく過程ではないかと思います。

 いずれまた折を見てレビューしてみたいんですが、なんせ毎日忙しくなってしまって…。次回の更新がいつになるかは分かりませんね。期待せずに待て!!

  

0 件のコメント:

コメントを投稿