2012年4月10日火曜日

ユッキーナのペルシャ冒険記

 あれだけみんなから「行くな」と言われても聞く耳もたず、単身イランへ飛んで個人外交を展開してしまった我らがユッキーナ。さっそく問題が勃発したのでちょっと調べてみたところ、これがなかなか面白かったので記事にしてしまいます。

  イランの核開発とイスラエルによる空爆の危機がささやかれるなか、「このままでは世界が核の炎に包まれてしまう!」と危惧したかどうかは知りませんが、元総理の肩書だけひっさげ颯爽とイラン訪問をぶちあげた我らがユッキーナ。

 ところが普天間問題の迷走ぶりと日米関係の悪化を間近で見てきた政界はこの訪問に大反対。自民党の山本一太議員は予算委員会で「羽交い締めにしても止めろ」と玄葉外相に要求。対する外相も「二元外交にならないよう慎重に」と珍しく野党の要求を真摯に受け止め、ついに野田首相みずから「国の立場と整合的でなくてはいけない」と語るなど、ユッキーナ包囲網が形成されたのが4日から5日にかけてのこと。

 もちろん国益を考え平和を愛するユッキーナは首相の説得にも耳を貸さず、イラン訪問を強行しようとするも、出発の6日になってルース駐日米大使が首相官邸に電話で懸念を伝える事態に発展。国中から「行くな」とか「いや、もう帰ってくるな」とか、まあいろんなことを言われながらテヘランに到着すると、まずは7日にイランのサレヒ外相と会談。

 共同通信の記事によると、このサレヒ外相との会談でユッキーナは広島・長崎を例に「どの国も大量破壊兵器、特に核兵器を持つべきではない」と持論を展開した模様。「どの国も」というからには米国・ロシア・中国も核兵器を持つべきではないということだったんだろうか。それならそれで一つの見識だとは思うんですが…。

 そして8日にイランのアフマディネジャド大統領と会談。ここでの会談が言った言わないの泥仕合に発展することになったわけですが、まずはイラン国営放送PressTVの記事を見てみましょう。

Ahmadinejad: Iran's nuclear program not beyond NPT

Japan's former premier, for his part, criticized the International Atomic Energy Agency for applying double standards toward certain countries including Iran, saying such a treatment is unfair.

During his trip to Iran, Hatoyama also met with Iran's Parliament Speaker Ali Larijani, and Secretary of Supreme National Security Council Saeed Jalili.

 この記事によるとユッキーナは、IAEAがイランのような国に対してダブルスタンダードを適用しており、そのような扱いは不公平だと発言したと述べられています。しかし記事中で明確にユッキーナの発言が引用されているわけではないところがややこしい。

 9日になってユッキーナが帰国したところ、このPressTVの記事が日本国内で大問題に。

鳩山由紀夫元首相帰国会見「作られた捏造記事」 MSN産経

 政府の反対を振り切ってイランを訪問した民主党の鳩山由紀夫元首相は9日帰国し、国会内で記者会見した。アフマディネジャド大統領との会談について「有意義な議論をさせていただいた。政府の考える線を逸脱するような発言は一切していない」と強調した。

 鳩山氏は8日にテヘランで大統領と会談し「核兵器のない世界の実現に向けお互い努力すること」を確認。イラン大統領府は、鳩山氏が会談で国際原子力機関(IAEA)について「特定の国々に二重基準を適用している。公平ではない」と述べたと発表した。

 これについて鳩山氏は記者会見で「完全に作られた捏(ねつ)造(ぞう)記事であり、大変遺憾に思っている。こういう発言はしていないことを先方に伝えたい」と反論。「日本は国際社会の疑念を払う努力を進めてきた」と述べ、大統領にもIAEAの査察などへの協力を求めたことを強調した。

 その上で核拡散防止条約(NPT)について「核保有国を対象とせず非保有国の平和利用に査察を行うのは公平ではないことは承知している」と断言。大統領に「NPTに入らないで核保有国になっている国にとって有利になっていることは承知しているが、非核の世界をつくるためにも国際社会との協力が必要だ」と述べたことも認めた。

 鳩山氏によると、会談で大統領は、国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6カ国との14日の協議で、事態打開に向けた具体的提案を行う予定だと語ったという。

 ユッキーナとしては「IAEAが二重基準で不公平だ」と発言した覚えはないということでモメてるわけですが、肝心なのはユッキーナ自身がNPT体制について「核保有国を査察の対象にしていないのは不公平だ」という認識を持ってることなんですね。おそらくアフマディネジャド大統領との会談でも、ユッキーナはこのような認識をほのめかしたのではないかという気がします。

 ご存知のようにユッキーナの発言は宇宙語でなされ非常にわかりにくいため、イラン大統領府の側も「ああ、ユッキーナは核保有国を査察しないIAEAを批判してるんだろうな」と強引に解釈してしまった可能性が濃厚ではないかと。まあイランに利用されたといえば利用されたんでしょうが、どっちみちユッキーナ自身が「核保有国を査察しないNPT体制は不公平だ」と思ってるんだから、言った言わないを議論すること自体が不毛でしょう。

 藤村官房長官は9日の会見で「個人の立場でも、こういう時期に訪問をされない方がいい」と述べ不快感を示しております。まあ政府の立場としてはそう言うしかないだろうと思いますし、自民公明も批判するなど今後の国会にも大いに影響してくるでしょう。

 しかし、ユッキーナが宇宙人であることを分かった上であえて言えば、実はユッキーナの認識自体は正しいんですよね。

 NPT(核拡散防止条約)体制は核兵器廃絶を目的としているというものの、その実態は米英露仏中ら核五大国(国連安保理常任理事国)の特権的地位を守るための体制であり、IAEAはその尖兵として核武装させないために各国の査察を行う組織だということは、あまり知られていません。

 ここにきてイランへの制裁がエスカレートしているのも、元はといえばIAEAが「イランは核武装しようとしている」とかなんとか報告書を出したからで、その報告書が出たとたんにアメリカが制裁へ動いたわけです。完全に米国とIAEAはグルになって動いている。しかもイスラエルに対する査察は実現していない。

 ちなみに日本政府はNPT条約発効直前の1969年、IAEAの査察対象に核保有国も含めるべきだと要求しています。当時の愛知揆一外相は加盟予定国への働きかけを公電で指示していましたが、この要求に米国側が激しく反発。核保有国への査察は実現しませんでした。その結果、アメリカもロシアも査察を免れているわけです。

 米ソの軍拡で大量の核弾頭が作られ、その後の軍縮で大量に廃棄されましたが、それらの核弾頭は処理するすべもなく「置きっぱなし」にされている。にもかかわらずIAEAはチェックしようともしない。こんな不平等でいいかげんな組織があっていいのか。

 そして何より、こんな不公平・不平等でデタラメなNPT体制に、日本がいつまでもつきあってやる必要があるんでしょうか? NPT批准時の外務次官・内田良平氏はNPTについて「日本とドイツの核武装を防止するためのもの」と発言していますし、実はIAEAの予算の7割が対日監視に使われているとも言われます。こういうデタラメな組織にタンスの裏まで執拗に調べられて、ペコペコ頭を下げなきゃならないなんて「国恥」というもんだと思うんですが。

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