2012年3月27日火曜日

原発テロと田中直紀

田中 直紀(たなか なおき、1940年(昭和15年)6月19日 - )は、日本の政治家。民主党所属の参議院議員(3期)、防衛大臣(第10代)、越後交通代表取締役社長。元衆議院議員(3期)。1969年に田中眞紀子と結婚して田中家に婿入りし、姓を鈴木から田中に改める。


 軍事評論家・兵頭二十八氏のブログ「Podcast28_Military_News_Blog」を愛読しているのですが、3月26日配信号で「Japan to push anti-terror measures at nuke plants」というAP通信の記事が紹介されていました。

Japan to push anti-terror measures at nuke plants

By ERIC TALMADGE | Associated Press

TOKYO (AP) — The U.S. had repeatedly warned Japan about vulnerabilities at its nuclear plants in case of a Sept. 11-style terror attack. It turned out Washington was right about the soft spots, but wrong about the enemy that would strike them.

When nature unleashed its own fury on Japan last year with a devastating tsunami, a list of U.S. recommendations proved highly prescient. The elements Washington identified as most vulnerable in an attack — spent fuel pools, cooling systems, backup electricity — were the ones worst hit in Japan’s disaster.

Tokyo had ignored the recommendations, which were implemented at U.S. nuclear sites, because Japanese officials thought the chances of terrorist-flown aircraft striking its plants were remote.

 (※兵頭訳)米国は過去、日本政府に対し、――「9.11」テロのような飛行機特攻で原発建屋を狙われますよ。それに対してオタクらは全然 無対策でしょう――と、何度も何度も警告をしていたのである。日本の原発の脆弱性に関するワシントンの指摘は正しかった。ただし、破壊力は空からではなく、海から来たのだ。

 米国政府はあの震災津波の前から、「使用済み燃料プール」「炉心やプールの冷却システム」「そのバックアップ電源」が、外からの破壊力に対して脆弱ですよ、と日本政府の注意を喚起し続けてきた。日本政府はシカトしたが、やっぱりそれらは脆弱であった。それが、はからずも2011-3-11地震で証明された。

 米国は原発への飛行機特攻を想定して、「9.11」後、それらの脆弱性をプロテクトする諸対策を講じ終えている。しかし日本政府は米国政府からの真摯な勧奨を無視し続けた。日本政府の言い分は、「とても起こりそうもないよ、そんなテロなんて」。

 米政府はテロ攻撃後の電源喪失に備えて、可搬式のディーゼル・ポンプを原発敷地内に置いておくことや、バックアップ用の炉心冷却水を送水できるホースの準備も教示していたそうです。日本側がこの通りにやっていれば、福島第一原発事故は起きなかったと。

 原子力発電所へのテロ攻撃については、かねてからその危険性が指摘され続けており、別に米政府の指摘を待つまでもなく、国内の保守系市民団体・シンクタンクなどが「原発テロへの対処をしっかりやれ」と、各方面に提言してきたことでもありました。

 朝鮮半島有事の際には北朝鮮の工作員が日本国内でローテクのテロを仕掛けてくる可能性がある。これはすでにさんざん指摘されてきたことであり、特に13基の原発を抱える福井県では北朝鮮による日本人拉致事件も起きていましたから、なおのこと日本海側の原発には注意が必要だと、多くの国民が認識していたはずです。

 にもかかわらず、「絶対に安全なものにさらに安全性を高めるなどということは論理的にあり得ない」という安全神話で自縄自縛に陥った原子力村は、あらゆる提言を無視して何のテロ対策も取ってこなかったわけで、震災以前から「原発テロ対策」を訴えてきた側としては、本当に憤懣やる方ない心地がします。

 さすがに事故後は自民党も反省し、自衛隊による原発警備を政府に提言。遅きに失したとはいえ、必要なことを提言したこと自体はまあ評価していいでしょう。しかし、民主党政権がこの提言をまったく受け付けない!

 3月26日の参議院予算委員会では、自民党の佐藤正久議員が野田総理・田中防衛大臣に原発テロ対策を糺しましたが、これに対する閣僚の答弁が本当にヒドイ。言葉を失います。

 以下、動画と質疑の書き起こしだけ載せておきます。

動画36分20秒頃からの発言。

佐藤正久 私は福島ですけども、この原発対処には非常に怒りを持ってます。非常にぬるい。自民党は「原発警備に自衛隊を活用すべき」と政府に提言を行っています。野田内閣のストレステストとか再稼働にはゲリラやテロ対処は一切入っておりません。テロリストは警察の所掌。でもゲリラコマンドは防衛大臣、防衛省の所掌ですよ。ゲリラ対処を所掌する防衛大臣として、再稼働、とりわけ大飯原発の再稼働についてどのような意見具申を総理にされましたか?

田中直紀 あの、防衛省といたしましてはですね、あの…おお、自治体あるいはあの関係のところからの要請がですね、あれば、これはあの、対処していく立場でございまして、えー今、あの、お話があればですね、それは適切に、えーあの、えーあの、意見具申は致しておりません。

佐藤正久 だからさっきから聞いてて、本当に「備えあれば憂いなし」じゃないんですよ。なんかあったら、自治体から要請があったらやるとか、本当に「憂いなければ備えなし」が野田内閣なんですよ。全然危機管理の基本がなっていない。ね? どうしてゲリラ対策、意見具申しないんですか? コーヒー飲みながらだってできますからね。なんでやんないんだって。総理。この前も答弁あったように、多くの原発において外部電源とか、あるいは冷却水を回すポンプ、あるいは取水口が脆弱だとやり取りがありました。一般論として。それでは総理聞きます。茨城とか福島空港から小型航空機が福島第一原発の電源とか第二原発の電源の方に近づいてる。これ航空自衛隊スクランブル発進できますか? 自衛隊の最高指揮官としてお答えください。

野田佳彦 それはちょっと意図等をはっきり把握しないと何とも言えない話だと思います。

佐藤正久 できるわけないじゃないですか。スクランブルってのは外国の航空機に対してやる。全然考えてないんですよ。これは9.11のようなことも考えたら想定しておかないといけない事態なんですよ? だから我々はいま提言をしてるんですよ。政府の方に出してます。航空自衛隊の対応すべきはこういうふうにした方がいい。出してるんですよ? いま非常に脆弱な状態なんですよ。このままだと、またあったら大臣、電源喪失しますよ。福島の再生なくして復興なしと言いながら、なんにも手を打ってないんですよ。防衛大臣。福島原発の警戒区域の監視状況を見ると、ゲリラあるいはテロリストでもいいですよ。入ろうと思えば簡単に原発に入れる状況だと思いませんか? これは危機管理の専門家ならずとも誰でも感じることなんです。誰でも入れる状態。これに対して大臣、本当にいいと思ってますか? 防衛省の最高責任者として、今の警戒区域の警備状況どう認識してますか?

田中直紀 あのー、ご指摘の通りだと思います。あのー警戒区域につきましては防衛省はですね、今、わたくしは、おー、山林の火災が発生してはいけないということで、まず連携を取って取り組んで来ておるところであります。ま、消防省(※消防庁?)とも連携をしている。そしてまた警察のですね、えー、治安の関係について、えー、わたくしは、あのー、連携を取って来ておるところでありますし、ま、警戒区域につきまして、あの、また警察から要請があればですね、あのー、防衛省として万全の態勢を組むことは考えていければと思います。

佐藤正久 大臣、全然危機感ないですよ。警察はテロですよ。ゲリラは大臣なんですよ。小型航空機で電源に突っ込む。地上部隊が連携して原発に入って予備電源を壊してしまったら、また電源喪失状態ですよ。そういうことを備えておくのが自衛隊なんですよ。なんにもやってないじゃないですか。火災!? それが一番優先順位が高い事項なんですか? 最悪のケースを考える。これは第一原発の所長も言ってましたよ。冷却水が回んない状態。これが最悪のケースなんですよ。そのためにどういう手を打つ? これが危機管理でしょ。なんにもやってないじゃないですか。大臣。今まで警戒区域とか原発の方に見に行かれましたか? 行ったか行かないか。それだけ答弁お願いします。

田中直紀 私は行っておりません。

佐藤正久 全然行ってないんですよ。普通だと行きますよ。私が大臣だったら心配になって行きますよ。どうだ?って。そこがあなたの危機管理の甘いんですよ。意志がない。守ろうとしない。あなたはまだ自分の実家のいわきの方にも震災後一回も行ってないそうですね。だから、いわきの方に行けないから原発に入んないんじゃないですか? そういう話もあるぐらいなんですよ。なんで行かないんですか? なんか行けない理由でもあるんですか? 行ってくださいよ。

田中直紀 あのー、おー、私はもともとは相馬が実家でございます。選挙区はいわきもありましたし、しかしまあ、いわきにも友人がおりますので、日々ですね、あのー、その状況は連絡をいただいておりますし、今も気にかけておるところでございます。当然ですね、要請があれば、そしてまた今、あのー、おー、原子力対策本部にですね、防衛省も派遣をしておりますので、ひとつひとつ、その防衛省としてやるべき問題について、あの、報告を受け、対応をしてきておるという認識をしておるところでございます。

佐藤正久 昔は相馬かもしれないけど今はいわきでしょ。そんないい加減な逃げの答弁しないでくださいよ。それで最後、総理。今まで話を聞いて、本当に私、福島原発の今の状況を憂いてるんですよ。テレビが入ってるから細部は言いませんけども、今1号機から3号機までの冷却水回してるポンプ。どうなってるか後で確認してください。ビックリしますよ。青くなりますよホントに。東京電力に任していい分野と、やっぱりゲリラ・テロのそれなりの専門の人間が行って見てあげないと。細部はこれ以上言いませんけども。だから野田内閣、危機管理甘いんですよ。自民党は原発警備について提言出してますよ。田中大臣がこんな感じですよ。しかも民主党にもそんなに危機管理に詳しい人がいないかもしれない。だったらこれは党利党略関係なく、自民党の提言を踏まえて、原発警備に自衛隊の活用を踏まえて、もう一度見直すべきではありませんか総理。

野田佳彦 あの、今ご指摘いただいた冷却水のところ、よく調べさせていただきたいと思います。後でちょっと詳しく教えていただければと思いますが、そのことだけではなくて、原発の問題は自然災害の対応だけではなく、テロ・ゲリラへの対応ということについて、緊張感を持って対応しなければいけないと思います。先にお気づきの点があればぜひ教えていただいて、我々も取り入れていきたいと思います。

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