2012年2月24日金曜日

奇跡の怪作!「大と大」を語るぞの巻!!

 

巨匠・本宮ひろ志が渾身の力を込めて描く壮大なロマン!
世界へはばたく2人の男が日本の命運をかけて激突する…はずだったorz

 原作は「男一匹ガキ大将」や「硬派銀次郎」「天地を喰らう」「サラリーマン金太郎」などでおなじみ、漫画界の巨匠・本宮ひろ志。90年代初頭に「週刊モーニング」に連載され、人気が出るかと思いきや、さほどでもなく終わってしまったが、いま読み直すとメチャクチャ面白い本宮漫画きっての怪作。

 1953年7月25日に生まれた西郷大と沢村大。衆議院議長の息子として生まれた西郷大は順調にエリートコースを歩み、宮大工の息子として生まれた沢村大は苦学してアメリカへ渡る。この対照的な経歴の持ち主2人は、持ち前の人情と根性でそれぞれ政財界でのしあがっていく。

 まず、この2人ののし上がり方がべらぼうに面白い。西郷大は父・創太郎の死後、自民党田口派から衆院選に神奈川三区で立候補しトップ当選。派閥のボス・田口角太郎の知遇を得て農水政務次官に就任し、順調に与党議員としてのキャリアを積んでいく。あえて解説しなくてもいいと思うが、田口角太郎は田中角栄のことで、角さんを本宮ひろ志が描くとこんな感じになる。

 まあ、これはこれでありかなって感じがしますか?この角さんに惚れ込んだ西郷大は、学生時代の彼女で敏腕TVプロデューサーの京子と不倫を繰り返しつつ、田口派の若手議員として頭角を現していくんだが、しばらくすると創世会(※経世会)騒ぎが起き、田口派の分裂劇が始まってしまい角さん激怒!自派を裏切った竹丸・金下らの選挙区に刺客を送り込もうとするんだが…。

 ここで心底から角さんに惚れ込んでいた西郷大が、目白田口邸の壁を乗り越えて涙と鼻汁を垂れ流しながら角さんを説得!創世会はなんとか旗揚げにこぎつけ、竹丸派が活動を開始した矢先に角さんが脳梗塞で倒れる急展開。

 倒れた角さんは復讐の鬼と化したか、病床から竹丸総理に電話をかけ「とことんぶっつぶす」と宣言。その直後リクラート事件が起きて竹丸内閣は完全に追いつめられるが、角さんから裏金の流れを記した帳簿をもらった西郷大が、竹丸総理のもとへ現れ「もうちょっと男らしい政治をしましょうよ」と言い放ち帳簿を焼いてしまう。

 すんでのところで自派皆殺しからまぬがれたことを恩に着た竹丸総理は、政局安定のために退陣を決意。創世会発足の影の功労者は角さんを説得した西郷大であったと閣僚たちに告げ、後を受けた津野(※宇野)内閣で西郷大は大抜擢!35歳の若さで外務大臣に就任してしまう。

 政界の常識から考えればこんな大出世はありえないわけだが、一方の主役・沢村大の方はもっと荒唐無稽なのしあがりかた。まず石焼きいもの屋台をひいて世界中を放浪し、かせいだ500ドルを元手にラスベガスのカジノで大ばくちをうつ。

 バカづきにつきまくって1千万ドルまで勝ってしまい、さすがに頭にきたカジノのオーナーがつぶしにかかってくるのだが、このオーナーが全米有数のコングロマリット、キングダムグループの首領ジェフ・キングダムだったからさあ大変。

 ジェフに気に入られた沢村大は、キングダムグループ下のウェスタン航空株式を52%もらいうけ、従業員のストライキを解決すると、世界1周航路を目指すブリテン航空に持ち株すべてを譲渡。かわりにブリテンの株式5%を沢村が受けとったところで、キングダムがブリテンに敵対的買収をしかける。

 最後の5%をめぐる攻防に入ったところで沢村が株式をキングダムに売ったため、ブリテンは消滅。キングダム勝利の最大功労者となった沢村大は、ジェフ・キングダム死後に後継者指名を受け、これまた世界有数のコングロマリット、キングダムグループの総帥になってしまう。

 これだけでもハッチャメチャな漫画なんだが、このあとさらに事態は過激に展開。キングダムグループの総帥となった沢村大は、実は生きていた(笑)ジェフ・キングダムの指令を受け日本経済壊滅作戦の陣頭指揮を取り始める。

 世界中にダミー会社を作ったキングダムグループは、原油・石炭・鉄鉱石・ボーキサイト・アルミ・天然ガス・スズ・銅・穀物・レアメタル・レアアース・知的所有権まで全てを牛耳り、日本経済の喉元を押さえて、その利益を吸収しにかかるのだが、もちろん外務大臣・西郷大も黙っちゃいない。

 キングダムグループの包囲網を打ち破るため、田口角太郎を担ぎ出して政財官界の協力を取り付けると、湾岸危機まっただ中のイラクへ直接飛んで、政府の意向を無視してサダム・フセインと直接会談!

 外相を罷免されるもイラクから世界中へ飛んで勝手に外交をおっぱじめ、なんだか分からないうちに人気が急上昇。日本に帰国すると社民党(※旧社会党)に接近して「社会主義政権樹立」のイデオロギーを捨てさせ、いきなり党首に就任して東京ドームで党大会をぶちあげる!

 ソ連崩壊による世界秩序の再編や、小沢一郎が中心となって実現した細川政権誕生にインスパイアされたと思われる展開で、この時期、著者の本宮氏はニューズウィークを熱心に読んでいたらしく、彼の政治志向が頂点に達した時期の怪作として、非常に興味深いのだが、なんせ大風呂敷広げ過ぎの展開でおさまりがつかなくなり、最後はやっぱり尻切れトンボな結末。

 作品としては明らかに失敗作なんだが、有名政治家やらあんな人こんな人が脈絡もなく登場するので読んでる側としてはサプライズの連続。名前だけ挙げても、田中角栄、竹下登、金丸信、小沢一郎、橋本龍太郎、早坂茂三、田中真紀子、土井たか子、ジョージ・ブッシュ・シニア、ミハイル・ゴルバチョフ、マーガレット・サッチャー、ジョン・メージャー、レフ・ワレサ、ヨハネ・パウロ2世、デイビッド・ロックフェラー、サダム・フセインなど錚々たる顔ぶれ。

 しかもコミックス第1巻には「ソ連崩壊」を予言した小室直樹博士が推薦の言葉をのせているなど、もう何がなんだかよくわからないが取りあえず時代の雰囲気だけは伝わるという、むやみに熱い作品になっておるのです。

 私がこの作品を読んだのは中学生のころだったんですけど、おかげで厨二病を発症しましたねー。もう国際政治大好き!政局楽しい!みたいな変な中学生になっちゃって、そのあとリハビリに非常に苦労した記憶があります。今でも国会中継や国際ニュースを見たりするのが好きなのは、あきらかにこのマンガの影響でしょう。

 いま思うと、これが本宮作品にハマるきっかけだったんだなーと懐かしさいっぱい。昨年コンビニでリバイバル版を売ってたので購入して読んでみたら、やっぱりハマってしまい、ついにアイコンまで西郷大にしてしまったのは内緒です。おひまがあれば読んでみてはいかが?

3 件のコメント:

  1. 『大と大』懐かしいですね。 正直、あの恰好良いフセインには「あり得ないだろ・・・」と当時もツッコミを入れつつ、それでもいまだにフセインに対しては「本当はいい人だったんじゃないか」と甘い点数をつけている自分がいます。

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  2. 読むに耐えない最悪な作品だった。

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  3. 本宮先生がフセインに裏切られちゃったところで実質空中分解した記憶がありますなw

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