2013年6月14日金曜日

【映画】アウトレイジビヨンド鑑賞記



『アウトレイジ ビヨンド』は、北野武監督による日本映画。2012年10月6日に日本公開された。第69回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品。R15+指定。




 見よう見ようと思いながら忙しさにかまけ、ついつい劇場で見逃してしまった映画。レンタルビデオ店に並びはじめたので借りてみたところ、かなり面白かったのでDVDを購入。

 「アウトレイジ現象」と呼ばれる社会現象を引き起こした大ヒット作なので、ストーリーの紹介はすっ飛ばして、印象的だった場面を拾ってみます。

 まず驚いたのは、中尾彬はじめ山王会古参幹部の密談シーン。ヤクザ映画で密談といえば料亭やスナックと相場が決まっていましたが、なんと高級レストランでワインを傾けながら密談とは!

 経済ヤクザの台頭に追いやられる古参幹部が、フレンチ(イタリアン?)を食べながら、我が身の悲哀を嘆いてみせる。高倉健の任侠路線とも、深作欣二の実録ものとも違う、新しいタイプのヤクザ映画を強く印象づけられる場面です。 

 光石研さん(写真右)を初めて見たのは「スチュワーデス物語」でしたねえ。堀ちえみの幼なじみ魚屋のさぶちゃん役だった光石さん。あれから30年、ヤクザ映画で貫禄を見せつけるまでになりました。

 ヤクザ映画には刺青がつきものですが、こちらも見せつけるのは女性だったり、デザインも和彫りでなく現代の若者らしい洋彫りだったりと、従来とは異なる斬新な演出です。

 夜のシーンは画面全体が青くなっています。ヨーロッパで「キタノブルー」と呼ばれる独特の色彩ですね。編集時にコントラストを意図的にいじってブルーにしているとか。青色には興奮を抑えて冷静さをもたらす心理効果があると言われています。

 裏切りの代償に、ピッチングマシーンで硬球を顔面に叩きつけられて処刑される加瀬亮さん。処刑方法のコミカルさはコメディアン北野武ならではですが、コミカルであればあるほど処刑の残酷さが際立つのは、笑いの奥に本質的な残酷さが潜んでいることの証明かもしれません。

 静謐なキタノブルーとあいまって“抑制された狂気”が深い余韻を残していきます。

 憎悪を爆発させる三浦友和! 彼の表情も実に見応えがあります。超二枚目俳優として全国の女性から崇拝されてきた三浦さん。長い俳優人生でも根っからの悪人を演じることは少なかった人ですが、今回は怒鳴ります!

 「なんだテメエら!俺に弓ひくのか!ふざけんなコノヤロー!!!」

 終盤に幹部が次々と殺されていくのは前作と同様ですが、今回はラストに葬儀場のお寺で発砲するシーンが。これはあきらかに「仁義なき戦い」を意識した演出ですね。菅原文太が「弾はまだ残っとるがよ…」の名台詞を残してから40年。北野監督は新しい時代を切り開いた手応えがあるようです。

北野武:高倉健さんの任侠映画の後、深作さんの「仁義なきシリーズ」というように日本の暴力映画、ヤクザの映画は歴史を作ってきましたが、多分この後、この「アウトレイジ」というのが、新しい時代のひとつのエピソードというか、時代だという映画が撮れたと思いますんで、最後まで楽しんで下さい。ありがとうございました。(ジャパンプレミア 2012/9/18)

 ヤクザ映画のようでいて、ヤクザ映画に見えない、狂気のエンターテインメント「アウトレイジビヨンド」大いに楽しめます。流血、破壊、暴力描写に腰の引けない自信のある方にはおすすめ!


 YouTubeに出演者のインタビューがアップされています。みなさん撮影を大いに楽しんだ模様で、見ているこっちが嬉しくなっちゃいますが、三浦友和さんのインタビューだけはちょっぴり耳が痛い内容。名優の人となりを知っていただければと思います。山口百恵さん、やっぱり男を見る目がありますね。

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